某制作会社のオープニングの様な、荒々しい波のイメージが強い日本海だが夏はどうやら穏やかそうだ。
親不知駅のホームからは静かな水面が覗く。
駅前のベンチに腰掛け靴紐を縛る。
これから40日に亘ってこの靴とともに歩んでいくのかと思うと、思わず「よろしく」なんて呟いてみたり。
駅から少し西へと歩くと道の駅親不知ピアパークがある。
トイレの為に寄ってみると、砂浜へと続く階段を見つけた。
当初の予定では登山口付近を出発地点に設定していたが、目の前に海がある。
「出発」を後回しにするのも煩わしい。
なんなら早くこの冒険を始めたくて仕方なかった。

サーーーッ、ザブーン。
子気味良い波の調べと、程よい日差しが心地よい。
なんて登山日和なんやろう。
とまらないワクワクを胸に、水面を登山靴でチョコっと踏みしめて。
ひと夏の大冒険が始まった。


道の駅から1時間ほどは、海岸線の国道8号線を歩いていく。
親不知付近は断崖絶壁を削って作られた道なので道幅が狭く、トンネルや覆道が続く。
それにもかかわらず主要道路とあって車の往来はそれなりに多く、トラックもよく通る。
登山においてルート上の難所のことを核心部と表現したりするのだが、歩き始めてすぐにそれがきた様な気分。
トラックのけたたましいエンジン音が反響して余計に恐怖心を煽ってくる。

いつまで続くねん、怖いてほんまにー。
なんて嘆きたくなった頃、登山口に到着。
ここまで歩いてきただけでもザックの重さが身にしみる。
これから登りかと思うと、出発時のワクワクは何処へやらな勢いで気が重い。
気合い入れんとあかん。
一遍山に入ってしまうと下界の数倍の物価。
ジュースもひょいひょい買ってられなくなる。
そんな都合を知ってかしらずか、お誂え向きに設置された自販機でそれぞれ好きなジュースを買って乾杯して。
「ほしたら行こか!」
ついに北アルプスの山々へと登り始めるのであった。
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